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中小M&A業界の草分け的存在、斎藤由紀夫氏を招いての講演会

スモールM&A 最新動向と多角化戦略 ㈱つながりバンク代表 齋藤由紀夫氏 2021/6/16

今回は、日本の中小M&A市場の草分け的存在であり、
当倶楽部の会員でもある、齋藤由紀夫氏にご登壇戴いた。

齋藤由紀夫氏 概略

経営革新等支援機関(中小企業庁主管、認定支援機関)
事業引継ぎ支援センター 専門登録機関
日本経営士協会 経営士
日本外部承継診断協会 顧問

1996年から16年間、オリックス株式会社に在籍、多くの新規Projectに参画。
東京都、新銀行東京、カード会社、生保・リース大手・
投資会社との共同作業の中で、株主間調整、
合弁契約解消、事業撤退・売却、海外子会社統合、
債権回収業務など、
ベンチャー企業から上場企業まで数多くの投資融資を手掛ける。

2012年、スモールM&A(中小零細)市場の普及をメイン事業として、
株式会社つながりバンク設立。

大手リース会社から独立して、中小零細M&Aを始めた理由

大手企業に16年所属した為、比較的大きな案件ばかりを対象としてきた。
当然のことではあるが、資本の理論が優先されており、
そうした環境で活動する中で、少子高齢化社会に重要なことは、
事業承継を始めとした中小企業を扱うM&Aの専門家の存在ではないかと感じ、独立した。

中小企業は社長の苦労と努力の賜物である。
そのため、個々を尊重し、尊厳をもって事業を再生させ、
次世代へと繋げるM&A事業の必要性を感じ、つながりバンク株式会社を設立した。

2019年公表の数字ではあるが、
法人税申告法人数は国内企業約292万社、
申告法人の2/3が赤字法人であり、
全体の約43%の127万社が後継者不足だと言われている。

中小企業の事業承継・統廃合・資本業務提携の重要性を
国はようやく認識してきており、
今後非常に注目される分野だと確信している。

中小M&A業界について

10年前、独立した当時は、M&Aというと大手銀行が扱う大規模のものという認識で、小規模のM&Aを手掛ける人はごく少数だった。
また、中小零細のM&Aの案件は、多くが業績が悪く立ち行かなくなったことで依頼してくるケースが多く、
手間の煩雑さと報酬が比例していなかったこともあり、コンサルタントが手をつけていない分野でもあった。

廃業になる前に再生させるには、
新たなスキームを構築することこそ重要だ。
中小企業をM&Aという側面から支援する専門家の大切さを感じ、
試行錯誤を繰り返しながら、この10年歩んできた。

大手と違い、創業者・経営者と直接関わることが多い。
そのため、彼らを尊重し、その気持ちに沿って行わねばならない。
提携後の人員活用など、相談事も多岐にわたる。

共感し、的確な実践的アドバイスを行いたい。そのため、
自分でも赤字の事業を運営してみないとわからないと考え、
数事業購入して、実践的なノウハウを構築してきた。

他の人に譲渡した事業もあるものの、
それらは今でも稼働している。

中小企業を廃業させることなく、
可能性を探り再生させることを信念とし、
この10年間走り続けてきた。

スモールM&A市場の最新傾向

創業当時、中小企業M&Aを手掛ける会社はほとんどいなかった。
しかし、現在は数千人が活動、現在は、中小M&Aは年間3000~4000件程度実施されている。
政府はこの数字を年間6万件、20倍近い件数にする指針を表明した。

私が独立した年(2012年)に、中小M&A支援制度が開始され、各都道府県に事業引継ぎ支援センターが設置された。

中小企業基本法で定義づけられる中小企業とは、業種によって異なるが、製造業は資本金3億円以下または従業員300人以下、サービス業は資本金5千万円以下または従業員100人以下の企業を示し、日本の企業総数のうち、個人事業主を含む中小企業は企業数で全体の99.7%、従業員数で68.8%を占めている。(2016年の経済センサス活動調査)

これが日本の産業構造の特徴であり、日本を支える企業の99.7%が中小企業であり、その内の43%が後継者不足に陥っているというのが実情だ。

少子高齢化社会の最大の社会問題に、この中小企業の事業承継問題がある。
この10年間に、ガイドラインが作成されるなど動きはあったが、今年度コロナ禍の影響もあり、2021年中小M&A推進計画が発表され、政府支援策が具体的に提示された。
これは我々にとっては大きな動きであり、中小M&A事業の新たなエポックと言えるのではないかと思う。
今後この分野は大いに注目されるだろう。

中小企業M&Aアドバイザーは、
このように注目されて間もない業界であるため、
誕生当時の不動産業界と同じく、規制団体もなくこれまで成長してきた。
そのため、
今後規制団体や登録制度など業界再編の動きもあるだろう。
正確な最新情報を共有し、多くのアドバイザーが活動できる存在であり続けたいと思う。

事業売却の理由・実態は何か

外部要因として、法改正・コロナ禍の影響・競争の激化・株主からの要請・市場の成長鈍化・人材確保の困難など時代背景的なものがあげられ、内部的要因として、後継者不在や資金繰りの悪化、経営者の体調不良などプライベートな事が原因がある。

数多くの案件の中で感じたことは、
経営者の仕事への倦怠感、経営意欲の低下が
要因の根底にあるとことだ。

例えば、経営者が高齢になり経営意欲が低下しているが、
社員や銀行には言えない。
顧問税理士に相談しても、
「まだまだ頑張れる」と言われている内に、
体調が悪くなり後継者も不在で廃業せざる得ないケースである。

人の採用疲れ、これ以上人を雇いたくない、借り入れもしたくない、これ以上リスクを背負いたくない、人生観を変えたい、一旦リセットしたい、挙句の果てには社長業は向いていないのではないかと言ってくるケースだ。

最初に訴えてきた時点では、価値のある優良案件も多いが、問題を先送りにして放置しておくことで、外的要因・内的要因が深刻化し、廃業しか提案せざる得ないケースもある。

中小企業の社長にとって、最も身近な相談相手は税理士だろう。
最近はインターネットなどで情報を収集できるため、税理士に言っても真意が伝わらない場合、直接M&Aアドバイザーや事業引継ぎ支援センターに相談し、税理士が知らない内にM&Aが進行しているケースも多い。

そのため今後は税理士自身がM&Aを手掛けるケースも必要だし、増えてくるだろう。
銀行法改正により、取引銀行が手掛けるケースもあるだろう。

多くのケースに接していて感じることは、経営意欲がなくなった時点でM&Aという方向性を一度検討してみることだ。
無理して経営を続けて廃業に追い込むより、
可能性を見出し、事業再生することで新たな可能性を見出すことこそ大切だ。

中小M&A推進の政府支援策

中小M&A推進計画の取りまとめを参照してほしい。

昨年始めてアドバイザーフィーが対象になる補助金が出た。
これは経済産業省が中小企業のM&Aを推進し、本格的に乗り出した支援策である。
M&A時の専門家活用の支援に対する補助金が出ることで、加速化すると思われる。
これから様々な法改正も行われため、より専門的な正しい知識が必要になるだろう。

同業者か異業者か

中小M&Aの場合、同業者同士、異業者同士と様々な形があるが、
同業者だと社員の融合やシステムの融合 仕事の仕方の融合が出来ないから上手くいかない、同業者は失敗が多い

売る方にしても、同業の場合、買い叩かれる場合もある。
何が問題なのか、根本を明確化する。
私としては、IT会社が出版社や農業生産法人を買うなどシナジー効果が期待できる異業者同士のマッチングを推奨する。

M&Aをライフプランとして考えよ

ある社長は自身の事業を継承した後、
地方の酒蔵を残したいという想いから、酒蔵を購入してその文化を支援している。
私たちが紹介するM&Aには、このように伝統文化を繋げる事業も沢山ある。

社長の時間は有限である。
現在日本人の平均寿命は、
女性87.45歳、男性81.41歳で、共に過去最高だというが、
健康寿命は、男性が70.42歳、女性が73.62歳だ。
参照元:厚生労働省(平成26年版厚生労働白書 健康・予防元年)

的確な判断力が出来るメンタル寿命は、もっと若年齢であるともいう。

これまで多くの経営者と接し、感じてきたことは、
自分の寿命を勘違いしている人が多く、事業継承を他人事のように思い、
永遠に現在の状況が継続できると思っている社長が多いことだ。

私個人は、自分で作った会社なので、最終的にはその行く末は
本人がしっかり考えるべきだと思っている。
そのため、事業者本人(社長)を対象とした勉強会も開催している。
専門家に委託する前に、自ら学んでみることこそ大切ではないか。

社長本人が、その仕組みや流れを学ぶことで、
新たなライフプランを構築してほしいと願っている。

日本の発展のためにも、企業をつなげる、人をつなげることを理念とし、
中小M&Aに関する正しい知識と経験を伝えていきたいと願っている。

株式会社つながりバンク
代表 齋藤由紀夫


スモールM&A(中小・零細企業のM&A)の第一人者

㈱つながりバンクは、
仲介・アドバイザリー業務をメインと、中小企業の課題解決に取り組む会社です。

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