1805年にボストンの実業家、フレデリック・チューダーが、
「氷を暖かい国に輸出したら商売になるのではないか」と考え、
その発想が世界中の人々の暮らしを大きく変化させた。
フレデリックが、リオやボンベイに氷を運ぶまでは25年を要した。
偶然にも同時期、1803年トーマスムーアが冷蔵庫を発明、
アメリカで一般普及が始まったのが1918年、
発明から事業化まで100年以上かかったのだ
世界を変えた感覚革命
「冷たさ」が仕事になると考えた人たちが、世界を変えた。
1920年にクーラーが発明され、可搬型エアコンになり、1940年には、アメリカで一般家庭に普及し始めた。
何を変えたかのか。
クーラーの登場により、アメリカの気温を変えてしまったのだ。
ヒューストンは真夏だと42度位になる。そのため、夏になると、南から北に移動する習慣がそれまでのアメリカ人にはあったが、「冷たさという感覚革命」は、その習慣自体を変えてしまった。
クーラーの登場後、たった10年間で、ヒューストンは6万人から94万人都市に、フロリダは100万人から1000万人都市になった。
この「感覚革命」は、政治経済も変えた。
それまでは、その地域は人口も少ないため、選挙において意識しなくてもよかったが、大きな票田となったことにより、地政学自体が変化した。
この流れが、現在の大統領選挙にも大きな影響を与えているのはお分かりだろう。
メタバース革命を考察する
エアコンの普及はアメリカの開拓パターンに大きく影響し、自動車が与えたインパクトに匹敵すると言われている。
私としては、馬車から自動車への転換より、現在進行しつつあるメタバース革命は、エアコンの普及と同じ、感覚革命ではないかと思う。
パソコン文化は誰が誕生させたのか。
メタバースはITの進化系だが、
それでは、パソコン文化(パーソナルコンピューター文化)は、誰が誕生させたのか。
パソコンは、1960年代のヒッピー族から始まっている。
1950年から1960年にかけて、西欧社会では「環境問題」と「情報革命」が大きく社会を動かし始めた。
環境問題という観念は、米国のレイチェルカーソンが、1962年に「沈黙の春」で告発して以来、1970年には、2000万人が参加したアースデイへと、急速に広がった問題意識だ。
この、たった一冊の著書から、環境問題の概念が産まれたのだ。
そして、1968年、スチュワートブランドが「Whole Earth Catalogue」を発刊した。
これは、地球上のすべての商品カタログであり、
ヒッピー達のバイブルになり、
「環境保全」という言葉を、企業や国がシステムの中に組み込む時代が到来し、これがSDGsの雛形になったと言われている。
そしてこの本は、ジョブスやゲイツの人生を変え、アマゾンやGoogleの基礎となった。
当時のアメリカの若者は、ベトナム反戦運動、環境問題、そして情報革命を真剣に求めていた世代であり、ジョブズもビルゲイツも、60年代、旧来の価値観や大企業論理に対抗した、環境保護主義者、ヒッピー族である。
人間としてどう生きていくか、
平等性とは何かを考え、世界とは何かを考えた。
この時代は、コンピューターによる通信、制御技術の革命、テレビやメディアの驚異的な発達、オートメーションが進化し、いわゆるサイバネティックスを中心とした社会がアメリカを支配しようとする観
念と事実が混ざり合い、時代を進めていっていた。
コンピューターはヴェトナム戦争でも大いに使用されていた。
当時の「環境問題」と「情報革命」は、 一人ひとりの人間の生き方を再定義するには、十分な材料が揃っていて、このままだと、コンピューターの世界も国や大資本に占有されると憂い、個人の解放を唱え、発明したもの。
それこそが、パーソナルコンピューターだ。
1974年に、彼らがパーソナルコンピューターを発明したことにより、個人の自由が世界中に広がっていった。
個人の解放、これこそ彼らの最初のビジョンであり、パーソナルコンピューターを発明した目的だったのだ。
だがその結果、どうなったのか。
初期の理念から離れ、個人の解放どころか、国家や大企業によって全体管理に利用されるツールとなっているおり、それまで以上の権力を持つことになった。
彼らは、コンピューターとインターネットで個人の解放を目指したが、結果的にインターネットは、個人を縛り付け、監視するものとなった。
それが現在の我々の世界である。
そして、今また、インターネットが生まれた時代と同じように、メタバースという新たなものが誕生しつつあるのだ。
メタバース、新たな感覚革命
メタバース開発者たちのビジョンは、パソコン登場期のビジョンと、非常に似ている。
現時点でまだ黎明期であるメタバースは、「個人の解放」の意識が技術者の間でも非常に強い。
仮想空間を作りだすことによる、個人の解放。これが前線の技術者たちの理念にあるのだ。
しかし、15年後、20年後は、おそらくパソコンと同じ結末を辿り、結果として、今以上、国や大企業に個人が飲み込まれていくだろうと思っている。
その流れはどう推移するのか。
これまで新しい技術は、20年間で生活を大きく変えてきた。
メタバースも、現在第四次革命の3年目であり、あと2年でこの5年周期が終わり、新しい次元へと進む。
今後15年間に、我々の生活はかなり大きな変化を遂げるだろう。
これは、歴史的視点からみても必然的な流れだと感じている。
そのため、現在ほど重要な時期もなく、この15年間で世の中がどのように変わるのか。
今我々は、しっかりと見据える必要があるだろう。
黎明期の動き
それではメタバース(metaverse)とは、一体何か。
簡単に言うと、「まるまる地球がもう一個できた」というのがイメージだ。
現在は、その何もない新たな地球で、陣取り合戦が行われている状態だ。
この陣取り合戦は、国、企業、個人単位で行われている。
アメリカの場合、FacebookがMetaに社名を変更、企業単位でプラットフォームを目指している。
一方、中国は独自プラットフォームで行うため、既に鎖国してしまった状況だ。
日本は、経済産業省が「仮想空間で生活が便利になる」という意識レベルに過ぎず、国家で取り組む意識はまだ低い。
仮想空間というと、アバターが会話やゲームするような、現実世界の延長みたいな世界だというのが、多くの人のイメージだろう。
また、ヘッドセットがないとできないと思っている人が多いが、そんなことはない。
メタバースはパソコン上でも、携帯内でもできる概念であり、活用範囲は非常に広い。
他の五感との組み合わせも行われており、皮膚感や嗅覚との組み合わせの開発が著しい。
例えば、嗅覚と視覚を支配すると、クッキーのようなものを食べながら、メタ空間の中ではフランス料理のコースが味わう事が出来る。
将来我々は、ぐるなびでレストランを選択、サプリメントを食べながら、味わうというようになるのかもしれない。
これこそ、感覚革命だ。
現在ネットでは東京と大阪を混合した、梅田東京というメタ空間があるが、そこで行われている実際のサービス内容は、まだ白紙状態であるため、参入価値は高いだろう。
また、土地の売買も行われているが、売っている方も、その先どう展開するかは、これからのようだ。
恐らく10年もしないうちに、メタバーズの中で恋人の新作を買うか、それとも、現実社会でめぐりあい、喧嘩をしながらも付き合うかという選択になるだろう。
おそらく80%位の人は「メタバース内の恋人の新作」を買うのではないかとも言われいる。
そうなるとリアルな恋人にブランド品を贈るより、メタバースの恋人に、プレゼントする人たちの方が増えるだろう。
そのため、メタバースでのサービス提供は、現実空間で既に成功しているファッションブランドやシューズメーカーなどには概念を作りやすく、既に取り組んでいる企業もある。
被爆者体験のなど、次世代に伝えておかねばならない事の伝承事業は、現在行われているが、この分野は、今後延びていく分野だと思う。
例えば日本を代表する現代アーティスト、草間彌生さんの芸術作品は、時代を超えて残るが、作者自身は有限である。
彼女自身をフォログラム化して残していくことで、芸術マインドと作品を永久的に残していくことが出来る。
企業経営者にも活用できるだろう。
創業者理念をAIに学習させることで、創業者自身が社員教育を行うことも可能である。
最初は想定されるレスポンスで覚えさせた範囲内で答えていくが、AIを活用する事により、リアルな人間より臨機応変な答えを返してくるようになる。
当然のことながら、相手により表情も変わる。
そうなると、事業継承も、自分のAIで良いのではないかという時代も来るのではないかと思うかもしれない。
現在はまだ、メタ空間のadidasシューズに、恐ろしい値段が付いていて、登記対象で買われているように、現在この市場を動かしてるのは、単純に新たな世界への熱気に過ぎない。
インターネットの黎明期のような熱気と同じ状態が、今の時点だが、新たな世界への創造熱気は凄まじく、どのようなサービスを行っていくかこそ、新しい世界の創造であり、物理法則も国境もない世界をどのように創造していくか、様々な創造性が求められている。
世界の潮流
日本は取り組みが遅れているが、世界が欲しがる歴史や文化遺産が日本には多くあるため、世界が狙っているのも事実である。
そのため、日本もいち早く取り組む必要があると思う。
それでは、世界がどのレベルで世界が進んでいるかというと、中国の深圳に2027年に完成するスマートシティ構想をみるとよくわかる。
この街のリアル空間には、鉄道も自動車も走っておらず、すべて地下に収納されており、歩道しかない。
なぜかと言うと、ほぼメタバーズの中で生活することしか想定していないからだ。
そのため、人は鉄道や自動車で移動する事はなくなり、歩く位しかないだろうという想定だ。
つまり、そのレベルで開発が進められているのだ。
彼らは世界が激変していくっていくと先取している。
日本のスマートシティ構想とは考え方もレベルも違うと思って欲しい。
世界の潮流は、現実の世界がメタ空間の世界を補助する逆転の世界は、15年後には登場すると予測している。
我々もその感覚でビジネスを考える時ではないかと思う。
NFTとメタバース
NFT(非代替性トークン)とは、【世界で唯一無二の物】を、ブロックチェーン技術を使用することで発行する「暗号資産」だ。
【世界で唯一無二の現物】自体は、全く減らないで、手元におきつつ、価値を売ることができるというのがNFTであり、そのため、大変注目されている。
しかし、現在は価値を売却するだけで、その先がない事業が多い。
我々は、それにメタバースを組み合わせることで、NFTを活性化できると考えている。
例えば絵画のNFTを購入したとして、それをメタ空間の部屋に飾る、その部屋の不動産(家)を用意する、その家がある街を用意し、自然空間を用意する。
そこまでしないと、所有欲求は満たされないのではないか。
現在は、単に価値が上がるのではないかという先行投資として、NFTが注目されているが、我々はこの先を作らなければ、一時的なもので終わってしまうと思っている。
現在はまだ、メタバースという地球がもう1個生まれたばかりの状態であるため、ヒマラヤの頂上に美術館を建築し、そこに自分が投資した絵画を展示することが出来れば、人の所有欲求と承認欲求は満たされるのではないか。
それにどのような付加価値をつけて見せることで、市場を作りだすか。
それこそメタ技術の活用であり、それにより、日本ならではの、新たな創造的価値が生まれるのではないか。
日本政府はまだバーチャル渋谷など、既存の世界から意識が逸脱できないでいるが、このように、日本独自の仕組みを発信していくことこそ、少子高齢化社会の日本には大切なことだと思っている。
メタバースの技術は、今までにない激変した世の中を創り出すはずだ。
その黎明期である今、生きていること自体、貴重である。
国境のない世界をどのように構築していくか、そんな創造性が求められる時代に、我々は生きているのだ。
株式会社All Of Creation
代表 清蓮貴