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法曹界の女性弁護士とNFT/メタバースにおける知的財産の状況 弁護士 光野真純

みやび坂総合法律事務所 弁護士 光 野 真 純

2014年1月弁護士登録
商標を中心とした知的財産法務を取り扱い、交渉や訴訟など紛争解決が得意。

所属

・東京弁護士会国際委員会副委員長
・日本弁護士知財ネットジャパンコンテンツチーム、日本商標協会、日本知財学会ブランド経営分科会所属。

著作等

  • 杉野服飾大学ブランドマネジメント論講師
  • WWD JAPAN「ファッションロー相談所」 掲載
  • 「私はラブリーガル(Drop Dead Diva)」日本語訳法律監修

東京弁護士会では、国際委員会に所属、また専門が知的所有権保護なので、日本商標協会、日本知財学会ブランド経営分科会、日弁連の知財ネットのジャパンコンテンツチームに所属しながら、日本の文化の知的所有権保護のための活動をしています。

Web3.0への移行期という観点からも、弁護士として何かできることはないか、研究を重ねています。

法曹界における女性弁護士の役割

弁護士会の中で、女性割合が一番多いのは東京です。

東京弁護士会には現在8890名の弁護士が所属、そのうち女性が約1857人とその割合は20.9位、大阪は4842名の弁護士の内、女性は913名、割合は18.9%、宮崎など地方では弁護士145名中、女性はわずか14名、その割合は9.7%、全国における女性弁護士の割合は、19.6%、これが今の日本の現状です。

これに対し、諸外国の女性弁護士の割合は、アメリカが34.4%、イギリスが48.8%、韓国でさえも25.4 %、ドイツは34.4%、フランスは55.4%です。

以前、スリランカの弁護士会を訪問した際、スリランカでさえ、日本より女性弁護士の割合は多いと言っていました。

今後どのように推移するのか見て行きましょう。
3年前のデータになりますが、2019年の司法試験の合格者が1502人、その内、女性が366人で、24.3%を占めているので、少しずつ上昇してくるとは思います。

しかし、法廷の場で女性弁護士が増えてくるには、相当時間はかかりそうな状況です。
その理由として、企業内弁護士の40.6%が女性弁護士であるからです。全体で約20%しかいない女性弁護士ですが、企業内弁護士の半分近くが女性弁護士であるため、私のように弁護士事務所に所属して法廷で戦う女性弁護士は数が少なくなってしまうのです。

周りの女性弁護士に、なぜ企業内弁護士に転身したのか、その理由を聞くと、ライフワークバランスが保てるからという意見が多くあげられました。
どうしても、結婚、子育の中でのライフワークバランスを保つには、法廷弁護士では制約があり、企業内弁護士に転身する女性弁護士が多いのです。このような状況ですので、法廷における女性弁護士が今後も増えていくかというと難しいのが現状です。

弁護士協会にも男女共同参画委員会があり、提案はされていますが非常に限界的です。
例えば、現在、育児期間中の会費は6か月しか免除されませんが、年収要件を設けて免除期間を延長する、弁護士会内に託児所を設置するなど、もっと積極的な育児支援がない限り、法廷における女性弁護士が欧米並みに増えていくのは難しいかも知れません。これは、日本の社会全体が抱える問題でもあります。ライフステージが変化する女性にとって働きやすい環境を整備することは、労働力人口の減少が課題となっている中で大切なことであり、今後企業に求められていく中でも、法曹界が率先して行って下さることを期待しています。

私の目標

私は、母が働いていたアパレル業界に役立ちたく、弁護士を志しました。

母の働く世界は華やかで憧れでもありましたが、実は商標権など海外から提訴される紛争が非常に多く、身心共に母が追い込まれている姿も多くみて来たため、本当に大変な業界でもあると感じていました。
母も含め、アパレル業界に勤める人は、法律が分からない人が多く、とにかく素敵な服を世界に紹介したいという想いだけで、パリコレなどに出展していくため、法律のプロ集団を有した外国勢から、商標権や著作権の侵害を理由に損害賠償を請求されるなど、壮絶な紛争に巻き込まれるケースが実に多いのです。
このような紛争に苦しむ母を目の当たりにしたため、自分達を守る武器として法律を学ぶことの大切さを痛感し、母を助けたい、アパレルを始めとした日本のアーティストの権利を守りたいという想いから、弁護士になりました。

そのため、私の目標の一つは、ファッション業界、アパレルに勤める人たちに、法律の基礎を知ってもらい、しっかり権利を守ってもらいたいと願っています。

デザイナーにとって、アートの部分も大切ですが、基本的な法律を知ることも大切だと思います。それを知って戴いた上で、世界に活躍していくことで、活躍の場を広げて欲しいと思います。
その想いから、現在、杉野服飾大学のブランドマネジメント論講師として、未来のデザイナーさんたちへの法律教育も行っています。

2つ目の目標は、「個人では叶えられないことでも、弁護士会を通すことで実現できるのではないか」という想いがあり、弁護士会を通して世の中を変えていきたいと思っています。
例えば、欧米では、コレクターが1年以上保有した芸術作品を、非課税団体に寄付すると、その作品の市場価格と同価格の所得税と法人税が免除されるという税制があります。
この税制を用いることで、経営者が若手アーティストの作品を購入し、利益が出た時に美術館などに美術品として寄贈することがアーティスト支援にもなると同時に、美術品の価値を鑑定する鑑定士の活躍の場も広がり、市場が出来ればと思います。このように、私個人では動かない世の中も、弁護士会なら国会にも意見書が提出できます。

そのため、今はとにかく一生懸命、弁護士会の活動に尽力し、提案できるような立場になることで、いつの日か、社会の変革に携わりたいと願っています。

メタバースにおける知的所有権

日本の民法上、所有権は有形のもののみに発生します。そのため、メタバース上の空間にある洋服や家具などの所有権を認めたNFTは、視覚では見えていますが、現実空間において実物として存在していないため、その所有権は現在の所、法律的には成立しません。

オープンシーなどのメタバース上の利用規約には、他者のメタバース上の持ち物を侵害しない、知的財産を侵害するような行為は禁止するという規約が書かれており、入会時にその承認を求められますが、仮に違反しても、そのサイトの利用規約違反に抵触するだけであり、現在の日本の法律においては、これらが「違法」であるという判断が下されることは難しい状態です。

それでは、メタバース上の絵画やロゴマーク、そのようなものの商標権はどのように保護されるのかというと、これは、対象物に応じて区分が分かれます。現在の商標登録は、その多くが現物に対しては取得していますが、デジタルデータに対しては取得していないため、デジタルデータで商標権を取得しない限り、商標登録は、デジタルデータには及ばないというのが今の法律での解釈です。

しかし、アメリカでは、既にそれに対する訴訟が起こされています。セカンドライフというメタバース空間では、自分の好きな家や街、ギャラリーを作ったりできます。その空間にて、ギャラリーを作った人がいて、そのギャラリーに、現実世界で商標登録がされている実在のギャラリーのロゴマークを用いた人がいました。無断で使用していたため、メタバース空間内での商標権の侵害が起きたという事で提訴された事案です。

これが仮に、日本のギャラリーのロゴマークでしたら、そこで取得されている商標権は、現実空間のギャラリーに対するもので、デジタルデータで取得していない限り、商標権侵害にはならないと判断される可能性は非常に高かったと思います。しかし、アメリカの裁判所は、現実世界の商標権がメタバース空間内でも行使できるという認識が前提で訴訟が進みました。結局双方の和解で終わりましたが、審議が継続されていたら、商標所有者による損害賠償請求が認可された可能性が大きかったと言われています。このように、アメリカでは、既に現実世界の商標権はメタバース空間で行使できるという考えが一般的になりつつあります。日本では意識がまだそこまで追いついていませんが、逆にしっかりとした情報を得ておかないと、訴えられる可能性もあるでしょう。

もう一つの案件は、エルメスのバーキンが、メタバース空間で販売されたケースです。
メタバーキンと呼ばれたメタアートで、色々なカラーや模様やイラストが施されたバーキンのイラストが、メタバース上でNFTアートとして販売された案件です。
勿論、これをエルメスが販売していたら何ら問題はないのですが、ロスチャイルドという個人が勝手に販売したため、エルメスが商標権侵害を訴えたケースです。

この事案に関しては、裁判所は商標権の侵害とは明言せず、今後エルメスがデジタル空間にて、エルメス商品のNFTを販売していく可能性は非常に高く、その際、混同される恐れがあるという理由で、商標権の侵害が将来的に発生すると判断し、エルメス側の損害賠償請求を認めています。これを観ると、如何にメタバースと共に、それに付随する著作権など法律も、現在黎明期であるということが、お分かりいただけるかと思います。

もう一つ、他人が運営するゴルフ場の様相を再現した3D映像を製作し、シュミレーションゴルフの運営会社にそのデータを提供した行為が、著作権の侵害になり得るとされた事案をご紹介します。シュミレーションゴルフ(スクリーンゴルフ)とは、利用者が特定のゴルフ場を選択すると、そのゴルフ場でプレーしているかのように感じられる環境がスクリーンに投射され、ゴルフを楽しむという、日本でも人気のシステムですが、韓国ではそれに関する著作権が話題になりました。この場合訴えられたのは、スクリーンゴルフメーカーに画像を提供した会社です。
この画像提供会社は、実際のゴルフ場を撮影し、その写真に基づいて3Dコンピュータグラフィックを利用し、ゴルフ場のゴルフコースをほぼそのまま再現した立体的イメージを製作して提供していました。
そのため、ゴルフ場コースの設計の著作権の侵害に当たらないかということで、提訴された案件です。韓国の法廷では、ゴルフ場のゴルフコースは、著作権法によって保護されるため、著作物に該当するという判断が下されています。

ここで問題になったのは、空間には著作権は発生するかという問題でした。例えば六本木をメタバース上で再現したら著作権法違反になるかというと、六本木の街自体は、公衆に解放された空間であるため、著作権は発生しないという解釈になります。ゴルフ場の場合、お金を払ってそのゴルフ場の中に入らないといけないため、公衆に開放された場所ではないとされ、著作権が認められました。空間の著作権は、解釈が難しいケースも多く、これからのメタバース時代、どのように捉えられていくか注目です。

このように、メタバースの著作権は始まったばかり、黎明期です。法律の専門家として、日々改訂されていく情報をしっかりとフォローしながら、これから続々と立ち上がってくるWeb3のクリエーターたちに、弁護士として、どうしたら支援が行えるか、日々研究を重ねております。

若手による日本文化の継承事業

最後になりますが、私には先程の2つの目標に加えて、もう一つ大きな目標があります。

それは、若手による日本文化の継承事業への支援活動です。

私は現在、湯島天神の白梅太鼓保存会に属しています。
多くの若者たちが、高校生や大学生の頃までは、ボランティア的な地域活動、お金にもならない活動に対し、夢をもって一生懸命行うことで、地域に継承されている日本文化も存続出来ていますが、彼らも就職してしまうと、当然のことながら、生活を自立させなければならないこともあり、このような活動から足が遠のいていきます。

それが結果として、今まで地域に継承されてきた日本文化の消滅に繋がると思うのです。

伝統文化の若い担い手が、きちんとした対価を貰って活動が継続できる、何らかの仕組みを構築したいというのが私の目標です。

白梅太鼓保存会の若い子たちは、年長者の厳しい指導を受けながら成長していくため礼儀正しい素晴らしい若者達です。
地域の文化活動は、古来より年長者との繋がりにより、次世代が育成され、文化が継承されてきた流れがあり、これが地域、文化、人間力を作り上げたのではないでしょうか。

これからは副業時代、地域の文化活動もまた、新たな産業の創出へと繋がればと願っております。

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