外国に移住している中華人を華僑と呼びますが、歴史の流れの発生順に「華商」「華工」「華僑」「華裔(かえい)」に分類して捉えると理解しやすいかもしれません。
華商とは、8世紀の唐代末期の国内動乱期に、中国大陸の海に面した地域、現在の福建省や広東省から貿易商として海外に出た人達です。
華工とは、18世紀末からの植民地時代の労働移民で、現在世界規模で拡大している華僑の主なルーツになります。少し前までの、「アメリカの洗濯屋や食料品店の中国人」をイメージして戴けたらと思います。
華僑とは、20世紀の前半に起きた中国の民族主義運動で、「親が中国人ならその子供は自動的に中国市民である」という血統主義の国籍法が打ち立てられたことで生じた概念です。それまで外地で曖昧な存在だった彼らを「外地に居住する中国人」と定義したことで誕生したアイデンティティであり、比較的新しい言葉になります。
華裔は更に新しく、外国で生まれ外国籍を所有した中国人の子孫で、高い学歴と知性と情報ネットワークを武器に、条件が良くて差別のない居住地を選択しながら移動するコスモポリタン的存在です。
現在、世界各地で活躍している華裔の多くは、客家と呼ばれる漢民族の中の少数民族が主体だといわれています。
客家は古代中国王族の末裔で、三国時代に戦乱から逃れて福建省まで南下した人達が祖になります。その土地に住む原住民から見ると“よそ者”であったため、客家(外来者)と呼ばれ迫害された為、団結力が非常に強く、大変勤勉で学業熱心な民族です。海を渡った彼らは、各地域で影響力を強めたので「中国人の中のユダヤ人」とも言われています。
シンガポールも台湾も香港も客家が建国した国です。彼らの存在抜きには東南アジア経済は語れないと言っても過言ではありません。客家のプリンスと華工の祖父を持つアメリカ人女性とのラブコメディ映画「クレイジー・リッチ!」には、彼らの感覚的違いが良く描かれていました。
勿論、その範疇に入らない人も多くいます。NHKドラマ「まんぷく」のモデルになった日清食品の創始者、安藤百福氏は、日本統治時代の台湾で生まれた漢民族で、戦後は中華民国籍になり、その後日本国籍を取得しています。彼は日本教育を受けているため華僑とは呼ばず、移住先の国籍を取得した中国系住民を「華人」と呼ぶことから、日本に帰化した華人という定義になります。中華系の人と仕事をされる際、まずは彼らのカテゴリーを分析することから始めてみて下さい。
ビジネス相手と対峙した時、同じ中華系としても相手がどのようなカテゴリーに属している人間かを見極めることが大切です。単一民族の我々日本人とは違い、同じ中華系といっても多岐に別れています。相手を知る為には歴史を知ること、そして歴史に裏付けされたバックグラウンドを知ること。言葉が流暢でない人程、彼らの文化をしっかりと理解する必要があるでしょう。
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